ローティーンアイドルは市民権を得たか?(2)

前項はid:dolphi:20050508:1115485822。

「怪奇倶楽部」のスタート

1990年代前半の「アイドル冬の時代」が、広末涼子という強力な牽引力の出現によって終焉を迎えた、という事は前項に書きました。
ところで、その広末涼子の登場以外にも、後の「チャイドル・ブーム」へと繋がる幾つかの重要な布石がこの時期に打たれていると思います。その中でも最も重要なのが、フジテレビ系列で1995年の10月から放送を開始した『木曜の怪談』シリーズです。シリーズは大きく5期に分けられますが、その中でもここで取り上げるべきはやはり、第1期*1 から第3期*2 まで3期連続で放映され、シリーズ中最大のヒット作となった「怪奇倶楽部」です。
「怪奇倶楽部」を語る上でのキーワードは、言わずもがなですが「メインキャスト」です。滝沢秀明今井翼、川野直輝のいわゆる「怪談トリオ」と野村佑香がスタート時のメインキャスト*3 として登場し、第2期「中学生篇」*4 からはここに前田愛が加わります。このキャスト陣のいったい何が重要なのでしょうか。それは、1981年生まれの今井翼から1984年生まれの野村佑香まで、番組スタート時全員が「ローティーン」以下であったという事です。
しかし、振り返ってみるにそれまでもローティーン以下の「有名子役」は存在していましたし、またその様なジャンルも確かに存在していました。例を挙げれば杉田かおるや斉藤こず恵がそうですし、何より当時直近では安達祐実が「天才子役」の名を欲しいままにしていた事は記憶にも新しいかと思います。ではその様な従来の「有名子役」と「怪奇倶楽部」では、いったい何が違ったのでしょうか。そしてそれは、なぜ安達祐実が「チャイドル」とは一線を画したのか、という事にも繋がっていくと思います。
まず最も大きな点は、従来の「有名子役」があくまで、大人向けドラマの「添え物」的存在であったのに対して、「怪奇倶楽部」ではその力関係が逆転し、大人がバイプレーヤーに徹するドラマ構成であった事です。また、折しも当時は常光徹の『学校の怪談』シリーズ*5 を中心として小中学生の間に起こった「怪談ブーム」の最中でした。『木曜の怪談』シリーズも、当初その様な「怪談ブーム」を意識して始まった事は想像に難くありません。当然メインターゲットの視聴層も、彼ら小中学生であった筈です。
つまり、まずフィールドが従来のような大人向けのドラマではなく、ターゲットを小中学生層とした「こども向けドラマ」であった事。これは『木曜の怪談』シリーズ全体に言える特徴です。そしてさらにその中でも「怪奇倶楽部」は、今まで脇役的存在でしかなかった「子役」のみによるドラマ、と言っても過言ではないキャスト・構成であった点が他と比べ異質であったのです。また、主視聴層である小中学生から見れば、自分とほぼ同年代の子役達がテレビ番組の中で、しかも「学校」という自分の身近にもある舞台で活躍しているという事になります。結果、登場人物やストーリーに、憧憬や親近感といったものをよりいっそう「リアル」なものとして抱く事が出来たのが、「怪奇倶楽部」がシリーズ最大のロングラン・ヒット作となった要因でもあるのではないでしょうか。
しかし、これだけではまだ回答としては不十分です。安達祐実野村佑香前田愛の「差」はいったいどこにあったのでしょうか。


id:dolphi:20050514:1116040014に続く)

*1:木曜の怪談』 (1995.10-1996.03)

*2:『新・木曜の怪談』 (1996.10-1996.12)

*3:野村佑香の弟役で森廉も出ていましたね。良い味出してました。

*4:木曜の怪談』 (1996.04-1996.09)

*5:講談社KK文庫。第1巻は1990.10刊。isbn:4061990063