℃-uteを考える(結)

ひとつは、その初ステージの異様さです。Berryz工房の場合、前篇の冒頭にも書いたようにCD発売前にも関わらず、中野サンプラザで大がかりなデビューイベントを行っての、まさに「鳴り物入り」のスタートでした。散々言及しているように、Berryz工房というユニットが「開拓者」である故のこの大がかりなプロモーションであったのかもしれませんが、しかしそれを差し引いてみるにしても、やはり今回の「℃-ute」の初ステージは異様です。「℃-ute」に用意された初ステージは、愛・地球博パートナーシップ事業イベント『熱っちぃ地球を冷ますんだっ。』のうちのひとつである「安倍なつみ 歌とトークの ふれあいコンサート」。これだけなら「まだ」分かります。しかしハロー!プロジェクトホームページの該当イベント詳細*1 を見てみると、

<出演>
安倍なつみ
ゲスト:保田圭ほか(環境省「環のくらし応援団」メンバー)
※出演者、開場、開演時間等は変更となる場合があります。予めご了承下さい。

と(今でも)なっているのみです。どこにも「℃-ute」の文字などありません。
シークレットゲストで… という好意的な解釈は出来なくもないですが、しかしツアーグッズの販売ページ*2 において堂々と℃-uteのグッズや生写真を販売している事を鑑みると、残念ながらこの解釈は成り立ちそうにありません。ではなぜ、「℃-ute」はこのコンサートにおいて初ステージを踏まなければならなかったのでしょう。出演者欄に名前も記されないような、このコンサートで。
ここでもう一度、つんく♂Pのプレスリリースを振り返ってみることにします。

 (前略)
で、では、Berryz工房に所属していないハロー!プロジェクト・キッズをなんて呼ぶか・・・。
いつも迷うのです。
Berryz工房以外??」「ハロー!プロジェクト・キッズの00と00と××・・・」


これは、いかん!
ということで、グループ名を決めちゃいました。
今後の活動の内容はさておき、ここは、とにかく、
安倍のふれあいコンサートにも出演するわけだし、なんか名前を!!!
・・・と思いまして。
 (後略)


http://www.tsunku.net/comments.htm#0611

もうおわかりかと思います。
序篇で僕はこのコメントに対し「そもそも、Berryz工房以外のキッズメンバーを呼ぶのにそんなに迷うでしょうか?(中略)…今回の結成劇は、なにやら根拠の段階から非常にあやふやなようなのです。」と疑問を持ちました。それがこのテクストの始まりであったわけですが、そもそもこの疑問は的外れであったのです。別に非ベリのキッズの呼び方なんて、言ってしまえばこのコンテクスト上ではどうでも良かったのです。実際今まで非ベリキッズを呼ぶときに迷ったでしょうか? そんなに慌てるほどに不便だったでしょうか?
これは呼び方がどうこうと言う問題ではありません。呼び方の問題はあくまで目を逸らさせるギミックに過ぎません。慌てて「非ベリ」の面々を「℃-ute」というユニットに糾合させた理由は、次の一行に尽きます。

安倍のふれあいコンサートにも出演するわけだし、なんか名前を!!!

そして、何故「慌てて」「出演者欄に名前も記されないようなコンサート」で初ステージを経験させねばならなかったのでしょうか。チケットも売れてしまってからの発表と言う事を考え合わせると、この状況は余りにも「℃-ute」のメンバーに酷だと言えます。この「お披露目」は事前から計画されていたものなどではなく、突発的に企画され、そして半ば強引に推し進められた計画である事は一連の不手際、慌しい動きなどから容易に想像がつきます。では事務所、そしてつんく♂Pは何をそんなに焦っていると言うのでしょうか。これに対する答えが、「℃-ute」が「鳴り物入り」などでない2つ目の理由です。


2005年5月1日、モーニング娘。に第7期メンバーとして、久住小春が加入しました。娘。にとっては久々の新メンバーですが、ここで1つ留意しておかねばならないのが、久住小春が1992年7月15日生まれの12歳である、ということです。これをハロー!プロジェクト・キッズの面々に当てはめてみると、

(以下略)
と、メンバーのほぼ半数が久住よりも年齢が上である、という事実が明らかになります。
ここにおいて、ハロー!プロジェクト・キッズモーニング娘。の「境界線」は非常に曖昧になってきたということが言えるのではないでしょうか。それによって、「キッズ」がハロー!プロジェクトにおける「予備軍」的存在から巣立つ時期が来ていた、ということが言えると思います。つまり「ハロー!プロジェクト・キッズ」という「お披露目ユニット」は、メンバーが「Berryz工房」と「℃-ute」というユニットへと展開していった課程で、その役目を終えたのです。*3
尤も、事務所的にはもう少し緩やかなペースでの展開を考えていたのだと思いますが、Berryz工房の(良い意味での)独走により、「℃-ute」結成を早めざるを得なかったのだと想像します。それが今回の歪なデビューの仕方に繋がったと思いますし、結果的には彼女たちのデビューにおける「ベストタイミング」を逃してしまったのだと感じます。


以上、及ばずながら今回の「℃-ute」結成の背景について考察してみました。今回の考察の鍵となる事象の1つに、「Berryz工房の急激な成長」という事があるのですが、その背景は以前書きかけたままほったらかしになっている「ローティーンアイドルは市民権を得たか?」の方に主に譲ろうと思うので(これもまとめ直さなきゃなぁ…)、今回はこの辺で稿を閉じさせていただこうと思います。
もちろん、絶対的に知識が不足していると思いますし、主旨に多分に関係ない論考まで含めたため煩雑な内容になってしまっている反面、必要な論考を後日に回してしまっていたりと至らない点は多々あるかと思いますがそのあたりはご容赦を。皆さんからの忌憚なきご意見をお聞かせ願えればと思う次第であります。


ってか、長っ! 余計な部分大杉でしたね。すみません。


(了)

*1:http://www.helloproject.com/schedule/01/02/list/list-abe.html

*2:http://www.helloproject.com/museum/tour/05_abe_earth/index.html

*3:そういう点で、今まで「ハロー!プロジェクト・キッズ」が有していた役割、ポジションは今後ハロー!プロジェクト・エッグに引き継がれてゆくのだと思うのですが、ハロー!プロジェクト・エッグのメンバーが基本的に非公表であり(一部公表)、まだユニットとしての活動自体が緒に就いていないところをみても、今回の展開が予想よりも早いペースで行われたものであると想像することが出来ます。