℃-uteを考える(後)

dolphi2005-06-20

id:dolphi:20050616:1118963395 からの続き)


あまりだらだらと書き続けるのも得策ではないと思いますので、今回をもって一応の結びとしたいと思います。まだまだ言い足りない部分や、舌っ足らずな部分はあるとは思うのですが、その辺りはまた後日、別稿にて補完したいと思います。少々長くなるかもしれませんが、どうぞ最後までおつきあい下さい。


前稿ではBerryz工房以前のローティーン・アイドルユニットについて、「何故どのユニットも瓦解してしまったか?」という問題意識の元、「Z-1」を事例としてその原因はどこにあるのかということを検討しました。そして「バランスの崩壊」という点をその要因の一つとして挙げたわけですが、しかしこれはある種当然のことであると言えます。言い換えるならば、それまでのローティーン・アイドルユニットはその性格上、ユニット全体としての成功は不可能であったということです。
…やや展開が飛躍してしまったかもしれません。順を追っていきましょう。
Berryz工房以前の「ローティーン・アイドル」という枠組みは、「アイドル」という枠組みの中に従属的に内包されていたと言えるでしょう。結局そうである以上、「ローティーン・アイドルユニット」は将来の「アイドル候補生」達の、良く言えば「登龍門」、悪く言えば「溜まり場」であったわけです。
確かに、彼女たちは魅力的であったかもしれませんが、しかし「候補生」はあくまで「候補生」であるわけです。常日頃から彼女たちのような「候補生」までを能動的にチェックする様な「コア」なファンはつくかもしれません。ですが結局、彼女たちの支持層はそのような限られた範囲を対象にしか広がりません。その枠を乗り越えて、大衆に自らの存在をアピールするまでの力量は、彼女たちにはまだありませんでした。なぜなら、彼女たちはまだ「候補生」であるからです。
このような「候補生」ユニットは今でもちらほら散見されますが、ではこのようなユニットにはどういった目的があるのでしょう。目的もなしにユニットを組ませ、プロモーションをするはずがありません。何か動機があるはずです。
はじめに「その性格上、ユニット全体としての成功は不可能」と書きました。もとより、事務所側がはじめからそのような考えでユニットを組ませたとは考えたくないのですが、結果的にはこれらのユニットは、次世代を担う「候補生」たちの、いわゆる「おひろめユニット」として機能したと言うことができます。業界からすれば、ファン層の狭いユニットとしての存在は(言い過ぎかもしれませんが)いわば「どうでも良い」ものなのです。その「候補生」たちの中から、いかに次世代を担う「アイドル」になりうるべき素材を見つけ出すか、という方に比重が置かれていたのだと思います。つまりBerryz工房以前のローティーン・アイドルユニットというのはユニットとしての成功を目的とした性質のものではなく、業界に候補生たちを「お披露目」するために、言ってしまえば「使い捨て」的に結成されたユニットであった、と言えるのではないでしょうか。*1 *2


さて、先ほどから「Berryz工房以前」と繰り返していますが、では「Berryz工房以後」はどうなのでしょうか。ようやくここに戻ってきました。
そもそも「Berryz工房以前」のローティーン・アイドルユニットについて考察してきたのは、それらが皆「瓦解」しているという事実があったからでした。当然Berryz工房、そして「ハロー!プロジェクト」もその延長線上にあります。しかし、前には書きませんでしたが、実は「ハロー!プロジェクト」はそれまで(Berryz工房結成まで)の段階において、これら「ローティーン世代」の呪縛からは解き放たれているはずでした。3期メンバーである後藤真希の成功により呪縛からの解放は加速し、4期メンバーの辻希美加護亜依の加入でほぼ完了したと言えるでしょう。*3
しかしこれらの「解放」は、モーニング娘。が「ローティーン世代だけで構成されたユニット」ではないという点から、やや擬似的なものでした。その様な点と、『開拓者』と位置づけましたが、Berryz工房においては「ローティーン」でさえないメンバーも交えた、どちらかといえば「アンダーティーン」に限りなく近いユニット―それはこれまでになかった全く新しいジャンル―であった点などが、プロモーション等の先行きにやや不安を与えたのでしょう。それまで「ZYX」や「あぁ!」などの実験的ユニットを経てある程度の手応えは掴んでいたものと思いますが、やはり未知の領域に踏み出すという事への不安感が、冒頭のつんく♂Pのメンバーシャッフル発言に繋がったのだと思います。
では、結果はどうだったでしょうか。


冒頭にも書きましたが、Berryz工房はそんな不安もどこへやら。シングルは7枚目を数え1st写真集も出すなど、その人気には目を見張るものがあります。今、ハロー!プロジェクトの中で最も勢いがあると言っても過言ではないと思います(私見ですが)。8人のメンバーも誰が極端に飛び出るということもなく、8人が8人とも勢いに乗っている、よくよく考えてみると驚異的なバランスのユニットに成長しつつあります。
さて、ここで予定が狂った… のかどうかは分かりませんが、冒頭のメンバーシャッフル発言の背景となっていた構想が、いい意味で打ち破られたということは言えると思います。メンバーシャッフルが、Berryz工房がブレイク出来なかった時のための活力剤的な選択肢として想定されていたのか、それともそこそこにブレイクした際にメンバーを適宜入れ替えることによって、スターティングメンバーの8人だけではない、ハロー!プロジェクト・キッズ自体の底上げを狙っていたのか…。それは分かりませんが、ひとつ言えるのは、事務所の予想よりも遙かに大規模な、爆発的な勢いでBerryz工房の人気が開花したという事です。そしてそれはさっきも触れたように、現行メンバーの絶妙なバランスの上に成り立っていると言えます。当初の言に拘って、その黄金比率を崩す事がどれだけ愚であるかは、さすがに事務所も分かっていたようです。そうして、Berryz工房は過剰なほど順調に人気を得ていきます。しかし、それはまたある種のジレンマを増大させていくということでもありました。ハロー!プロジェクト・キッズの二層分化、という現象です。
Berryz工房のメンバー達が着実に知名度と人気を得ていく中、Berryz工房のメンバーに選ばれなかった、いわゆる「非ベリ」のキッズ達がただ手を拱いていたというつもりはありません。ですが、Berryz工房が「お披露目ユニット」ではない、真の「アイドルユニット」へと飛ぶ鳥を落とすような勢いで成長して行く中、彼女たちはやや「取り残されて」しまっていたと言えはしないでしょうか。前稿の考察を用いて例示するなら、乱暴な例えになりますが、

という等式でそれぞれ表すことが出来るのではないかと思います。厳密には多々違いがありますが、「お披露目ユニット」としての役割を「ハロー!プロジェクトキッズ」が担って(しまって)いる、という考えです。


何にせよ、Berryz工房からは「取り残されて」しまった「非ベリ」のキッズ達。一方のBerryz工房は今夏、初の単独ツアー「初単独〜まるごと〜」を開催するまでに成長しています。その様な中での「℃-ute」結成の発表は、見方によれば自然な流れともとれます。Berryz工房を試金石として、(その成功が充分な形で結実した後に)満を持して残りのキッズを総動員して結成する鳴り物入りユニット、それが「℃-ute」だ、という見方です。
しかし、2つの観点から僕はこのような見方を否定したいと思います。「℃-ute」は決して「満を持して」のユニットでも、「鳴り物入り」のユニットでもないのです。

*1:ただし、これはあくまで結果論であることを強調しておきます。当初から事務所側が(「お披露目」という意識は多少なりともあったにせよ)「使い捨て」的な位置づけでユニットを組んだとは思えないし、またそうであってはならないと思うからです。

*2:これに対してはおそらく初期のSUPER MONKEYSやSPEEDを挙げた反論が出てくると思いますが、彼女たちは純粋な「アイドル」と言うよりは「歌手」であると言った方が適切でしょう。歌手色が強いから範疇外にするという事ではなく、彼女たちにおいては「歌」という誰とも対等に戦えるフィールドに立脚していたという点が異なると思います。そこでは年齢など関係ありませんし、ましてや「候補生」などというものも存在しません。

*3:このあたりについては後日別稿で補足したいと思います。